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Padd design、デザイナー蓮井明治さんインタビュー


PADMA IMAGEのビジュアルイメージ。モデルはモデルSTK Col.1(右)とHEX Col.3(左)を着用

香川県に拠点を置くPadd design(パッドデザイン)は、PADMA IMAGE(パドマイメージ)、N PRODUCT(エヌプロダクト)、tico chouette(ティコシュエット)の3つのオリジナルブランドを展開している。今回はこれらのブランドの企画・デザインを手掛ける蓮井明治さんに、ブランド立ち上げの背景、デザインへのこだわり、そして出身地でありアトリエを構える香川県の魅力と想いについて伺った。(上:PADMA IMAGEのビジュアルイメージ。モデルはモデルSTK Col.1(右)とHEX Col.3(左)を着用。)

 
PADMA IMAGEのモデルSTK Col.1

上:PADMA IMAGEのモデルSTK Col.1


独学でデザインを学び、ブランド設立へ


蓮井さんはPADMA IMAGE(パドマイメージ)、N PRODUCT(エヌプロダクト)、tico chouette(ティコシュエット) の3つのオリジナルブランドを Padd design(パッドデザイン)として企画・デザインされています。


PADMA IMAGEは「感覚の追求」をコンセプトに2011年に立ち上げられたとのことですが、独学で眼鏡のデザインを学び、ブランドを設立するに至った経緯をおしえてください。

眼鏡とはあまり関係のない工業大学生だったのですが、ファッションアイテムのひとつとして眼鏡が好きでメモ帳に鉛筆でデザインをいろいろ描きためていました。いつか自分のデザインを形にしたいという思いがあり、大手眼鏡チェーン店に就職しました。当時、会社の取り組みでSILMO Paris(シルモ・パリ:ヨーロッパ最大級の眼鏡・光学機器見本市)の買いつけに参加出来る枠があり、迷わず応募しました。海外の写真集や雑誌などでしか見られなかったようなワクワクする眼鏡がたくさんあり、かなり刺激をうけたと思います。

その後、鯖江に通ってオリジナル眼鏡を作ってもらったり、前職を通して知り合ったデザイナーに相談したりして、2011年に地元香川県に戻りPADMA IMAGEを立ち上げました。言葉にするのは難しいけれど良いと思える、感覚に刺さるものを模索しています。


SILMO Parisでは、どのような眼鏡をご覧になったのですか?


当時、僕が勤めていた眼鏡店には、流行のカッコいいデザインの眼鏡が多かったんです。でももう少しヨーロッパ寄りのデザインが好きだったので、お店にないようなカラフルで可愛らしいデザインのメガネをたくさん見ることができて、とても楽しかったですね。

多くの場合、取引があるブランドの全商品が入荷してくるわけではなく、その中からお店によってセレクトされた一部の商品がお店に並びます。だから、僕はそれがそのブランドのすべてだと思っていたんです。でも、SILMO Parisで全コレクションを見てみると、クラシックなデザインや、赤いラウンド型のフレームなど、様々なデザインがあって。「このブランドはこういうデザインだと思っていたけど、実際はもっと攻めたデザインもあるんだ!」などブランドをより深く知ることができました。ほかにも、まだ日本に入ってきていないような珍しいデザインの眼鏡がたくさんあって、すごく刺激を受けました。

Padd design蓮井さんのデッサンの一部

上:Padd design蓮井さんのデッサンの一部


3つのブランドに込めた想い


PADMA IMAGEのブランド名にはどのような意味が込められているのでしょうか?


PADMAはサンスクリット語で蓮の花という意味で、自分の名前からPADMA IMAGEと名づけました。サンスクリット語は古代インドの言語で、蓮の花はインドの国花になるほど大切にされています。「蓮は泥より出でて泥に染まらず」ということわざがあり、そうでありたいという想いもあります。

PADMA IMAGEのモデルHEX Col.3

上:PADMA IMAGEのモデルHEX Col.3


N PRODUCTは、アセテート素材を使用するPADMA IMAGEとは異なり、天然素材のバッファローホーンを使用されています。その理由と魅力を教えてください。


もともとアセテートの乳白色やナチュラルな色も好きで、PADMA IMAGEでもホーン柄のアセテートはよくつかっています。ビンテージから最近のものまで私物でいろいろな眼鏡を持っていますが、バッファローホーンの眼鏡は天然素材なのに色柄のバリエーションが豊富で、人工物では表現できない力強い魅力があり惚れこみました。天然素材の眼鏡は高価で取扱いが難しいとされていますが、木材より調整が可能で、べっ甲ほど高価ではないので、ラグジュアリーな嗜好品としてではなく、もっとカジュアルなアイテムとして流通させることが出来ると感じています。偶然ですが、香川県に天然素材の眼鏡修理職人さんがいらっしゃり、アフターメンテナンスができることもブランド立ち上げの後押しになりました。

N PRODUCTの上からモデルOcelot、モデルStorks、そしてモデルArmad。厚みのあるバッファローホーンの根元の部分を採用。天然素材ならではの大柄が魅力的。

上:N PRODUCTの上からモデルOcelot、モデルStorks、そしてモデルArmad。厚みのあるバッファローホーンの根元の部分を採用。天然素材ならではの大柄が魅力的。


2024年には、香川県在住のイラストレーターの山口一郎氏の素敵なフクロウのイラストをブランドの象徴とし、小さいサイズの大人向け眼鏡ブランドtico chouette(ティコシュエット)を発表されました。このブランドを立ち上げた経緯や、込めた想いを教えてください。


PADMA IMAGEで昔シンプルなオーバル型とかを作っていた時代があって、綺麗でシンプルなものを、またやりたいなと思っていました。ただ今のPADMA IMAGEとはかけ離れているので、別ブランドを作ることにしました。昔と比べるとお顔が小さい方が増えましたが、既存の小さいサイズのブランドはガーリーなデザインのものが多く、もっと中性的でカッコいい、シンプルなものを作りたいという思いがありました。山口一郎さんは昔僕がボランティアのアートイベントを手伝っていたときに知り合って、今回お声掛けさせていただきました。個人的にいくつか作品を持っていて、人柄も魅力的な方です。

tico chouetteの上からモデルAWA #1と#5。モデル名はすべて島の名前に由来。AWAは香川県の粟島(あわしま)より。

上:tico chouetteの上からモデルAWA #1と#5。モデル名はすべて島の名前に由来。AWAは香川県の粟島(あわしま)より。


デザインのインスピレーションは、どこから得ていますか?


幾何学的な線で構成された図形の本や、動植物の図鑑など、眼鏡以外の本もよく参考にしています。図形は巻貝や蜂の巣、植物等にみられるように自然界にも存在します。もともと工業大学で図形の重なりからできる形が面白く興味があり今のデザインにも活かされていると思います。


デザインの際に、とくに意識していることや大切にしていることは何ですか?


モノとして魅力があり面白いことと、掛けたときに似合うかどうかのバランスは気をつけています。やはり使っていただきたいので。図面が出来て工場に発注したあとでも、ギリギリで仕様を変更することも多々あります。工場には迷惑をかけてしまいますが、最後の最後まで、自分が欲しいと思えるかどうか、納得のいくものが出来るかどうかを大事にしています。


ブランドの立ち上げ以来、出身地である香川県を拠点に活動されていますが、その理由や、香川県の魅力について教えてください。


大阪の眼鏡店に勤めていたときも休みを見つけては香川にもどり、瀬戸内海の島に行ったり趣味の釣りをしたりしていて、とにかく自分にとって落ちつく場所だと思っています。生活環境はとくに大事だと思っていて、都心や産地から離れていて、僕にとっては適度に影響をうけながらリラックス出来る良い環境だと感じています。

アトリエPadd AP.(パッドエーピー)の近くからの景色。

上:アトリエPadd AP.(パッドエーピー)の近くからの景色。


趣味の釣りはよくされるのですか?


最近はあまり行けていませんね(笑)。

香川県ってため池が多いんですよ。もともと雨がすくない地域なので、田んぼに水を引くために、雨水を溜めるための小さな池、ため池がたくさんあるんです。そこにはブラックバスがたくさんいて、僕が小学生の頃はバス釣りがすごく流行って。海釣りもたまにするんですが、どちらかというとバス釣りをしていました。


昨年、Padd designの新たな拠点として香川県の山と漁港のほとりにアトリエを構えられたとのことですが、アトリエでは全ブランドのフレームを見ることが可能でしょうか。また、訪れる方々にとってどのような場所になればと考えていますか?


イベントで貸出中でなければ全ブランドご覧いただけます。今まで自宅で作業してましたが、ブランドが増えて手狭になってきたので、作業場を探していました。漁港の哀愁のある感じや古びた建物が好きで、いろいろ探して漁港近くのアパートを借りました。今まで来られた方はほとんど県外の方ですが、せっかく遠くからお越しいただいたので、来てよかったと思っていただければ嬉しいです。コロナ以降、イベント等でユーザーの方と交流することがなくなったので、話してると新鮮で逆に学ばせてもらっています。

アトリエPadd AP.(パッドエーピー)の看板。アトリエ兼ショールームとなっている。

上:アトリエPadd AP.(パッドエーピー)の看板。アトリエ兼ショールームとなっている。


Padd designの今後の活動や展望について教えてください。


独立してからアイデアのはけ口がPADMA IMAGEだけだったので、たとえば他にやってみたいアイデアがあったときに、PADMA IMAGEの雰囲気に合わないものはボツにしていました。そういったアイデアがある程度溜まって、表現したいのに形にできないジレンマがありました。この状況は良くないと思い、2020年あたりから下準備をはじめて、ブランドを新たに作り法人化することにしました。時間がなくてなかなか取り組めませんが、3ブランド運営する過程で新たに出来たアイデアとかも沢山あって、リメイクとかノーブランドで一点もの商品とかもゆっくり時間をかけて作ってみたいです。


4月8日には春の展示会「Ramble 2025」に出展予定のPadd design。新作フレームもとても楽しみです。

インタビューにご協力をいただき、誠にありがとうございました。


蓮井 明治

Padd designアイウェアデザイナー。香川県を拠点に3つの眼鏡ブランドのデザイン・企画を手掛ける。幾何学をテーマに感覚的にデザインされた 「パドマイメージ」 、バッファローホーン製の「エヌプロダクト」、小さいサイズの大人眼鏡「ティコシュエット」を展開。

 

Padd design LLC. HP: https://www.padddesign.com/


PADMA IMAGE Instagram:@padmaimage


N PRODUCT Instagram:@n_product_eyewear


tico chouette Instagram:@tico_chouette


アトリエ Padd AP.(パッドエーピー)HP:

〒769-2102 香川県鴨庄3871

 

CULTURE EYEスタッフあとがき

ついに、Padd designの蓮井明治さんへのインタビューが実現しました。というのも近年、蓮井さんはPADMA IMAGEに加え、新たに2つのブランドを立ち上げられ、ブランド立ち上げが落ち着いたら…というお返事をいただいていました。蓮井さんが生み出す眼鏡フレームの魅力は、個性的なデザインの中にデザイナーの意志と細部へのこだわりを感じる点と個人的に感じています。Padd designのフレームが纏う、清らかな佇まい。その秘訣は、蓮井さんの地元であり、活動拠点である香川県にあるのかもしれません。アトリエ兼ショールームのPadd AP.を訪れれば、Padd designの魅力をさらに深く感じることができるはずです。いつか伺いたい!

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